Stories

浅間山ろく玄鳥記シリーズ

今もなお、軽井沢の基底に伏流している浅間根腰の三宿の風土。これを小説世界に再現し、寒冷で火山性の貧しい土壌に覆われた過酷な地に生きる人々の情と、たくましくも、時に哀しい生き様を見つめる。

1.闇夜の雪

明治以降、清浄なる別荘地として知られてきた軽井沢界隈も、当時は中山道筋・浅間根腰の三宿〈軽井澤・沓掛・追分〉と称される、遊女・飯盛女が袖引く繁華で猥雑な宿場町であった。玄兵衛はこの三宿の地で女たちに小間物を売り、時には貧窮の故に娘を売る人々の絶望を〈女衒〉として引き受けながら、沓掛の寓居で心静かに暮らしていた。だが、貧農の娘・おみつの身売りの手配を機に、玄兵衛の過去の因業に関わる人々の生が、江戸から上州高崎、そして碓氷を越えた浅間三宿の地を舞台に交錯し始め、その運命の糸はやがて誰もが思いも寄らぬところへと手繰られることになる。

2.馬子唄道中

『闇夜の雪』に続く、シリーズ第2弾。 ※ 近日、Amazon Kindleにてリリース予定。

 

古典シリーズ

  • 荼枳尼の修法

鎌倉時代初期、橘成季により編纂された説話集『古今著聞集』から題材を得た短編。平安時代後期に実在した藤原忠実。摂政の地位を狙う忠実の執念が導く結末とは。 

 

  • 妙音院の楽の音

平安時代後期、琵琶の名手として知られた藤原隆時のもとに、目代の入道が駆け込んできた。着衣は乱れ、困惑の表情である。常日頃は鷹揚で冷静沈着な入道だけに、尋常ならざる事態であった。この後、隆時は、思いもよらぬ出来事に遭遇することになる。  

 

ちいさなボウ

土のなかから出てきた、ちいさなボウ。その黒い目がとらえた、危険に満ちた、しかし多彩で、時に心踊る世界。その世界は、ボウにとって確かにそこに存在した。今を生きるすべての人に贈る、ちいさな物語。

ちいさなボウ〈上〉

この日、ちいさな蝉が土の中から出てきました。 ツクツクボウシの子どもです。 名前は〈ボウ〉。 ボウの頭の上には、柔らかい ...

ちいさなボウ〈下〉

  → ちいさなボウ〈上〉から続く    翌日。 立派な蝉の姿になったボウが、公園の木立の中にいました。  じー  つく ...