2025年春分・雷乃発声:ありがとうの樹

3月31日からは、七十二候の「雷乃発声(らいすなわちこえをはっす)」。
春雷の季節ですね。明日からの荒天に雷も鳴るのでしょうか。

雷といえば、近隣の楠(くすのき)に落雷がありました。
一昨年の初夏のことです。
樹齢100年に及ぶであろう、豊かな葉に陽射しが輝く立派な樹です。
その枝葉の下は、蝶がはらはらと舞う〈蝶の道〉になっていました。

往き帰りには、そのそばに立ち、挨拶し、語りかけたものです。
「おはよう」「ただいま」「今日もありがとう」……

その落雷の時、轟音とともに、あたりが燃えるように真っ赤に光ったとか。
幹の皮は裂け、飛び散り、破片となって道に散らばっていました。
心が痛み、「大丈夫だよ」「頑張ろうね」……幹に手を当て、幾度も語りかけました。

それから、1年半あまり。
剥がれた樹皮は、その周囲が次第に盛り上がり、傷口を塞ぐように広がっています。
何事もなかったかのように、新芽が新しい枝葉となりました。
ひこばえはすくすくと伸び、幹の足元に小さな森をつくっています。
もう大丈夫、ですね。

落雷のあった樹は、御神木にもなるとか。
この界隈を守る、まさに御神木たる堂々とした樹です。

そして、私はこの樹を〈ありがとうの樹〉と呼んでいます。
かかわってくださった方々への「ありがとう」、今、生きる社会への「ありがとう」、無事に生きていることへの「ありがとう」。
すべての「ありがとう」を受け止めてくれる樹。
この樹を通して「ありがとう」がたくさんの方に伝わることを願っています。