2025年立夏・蛙始鳴:春の蛙と夏の蛙

更新が遅れました。

事務所・TN worksに再び参入。IRの業務が始まったところで、気づけば季節は立夏に入っていました。

七十二候では、蛙始鳴(かわずはじめてなく)。

田んぼに蛙が鳴き始める季節です。

 

信州の広大な畑の畦道。

そこを歩いていると、蛙がぴょこぴょこと飛び跳ねたこと。

夜には蛙の合唱が絶え間なく聞こえていたこと。

第二の故郷である東信(信州の東側のエリア)の情景が、懐かしく思い起こされます。

それもまた、人生の大切な財産。

(アイキャッチは千曲川畔の畦道にて)

 

さて、蛙のお話。

古来より数々の和歌集があります。

そこには、序文が置かれます。

仮名で書かれた序文を「仮名序」、漢文で書かれた序文を「真名序」と呼びます。

 

『古今和歌集』の仮名序にはこうあります。

花に鳴く鶯 水にすむ蛙の声を聞けば 生きとし生けるもの いづれか歌を詠まざりける

有名なくだりです。

 

また、平安時代の歌人・藤原俊成が筆した『古来風躰抄』にも蛙が登場します。

春深くなるままには 井出の山吹に蛙の鳴き

蛙は、ここではいずれも春の風物とされています。

 

ところが、それに反し、夏の蛙を歌った歌人もいました。

藤原俊成の子息・定家もその一人。

庭たづみ垣もほたへぬ五月雨は 真木の戸口に蛙鳴くなり(『拾遺愚草』)

五月雨といえば梅雨の頃、まさに初夏です。

そして、今、二十四節気では立夏。

 

暦の制度の変遷や気候変動、そして生活習慣の変化。

さまざまな要因によって、二十四節気も七十二候も今の時代には合わなくなってきています。

それでもなお、季節の移ろいに向けられたいにしえの人々の眼差しが、ふと感じられる時があります。

私たちも、その感覚を脈々と受け継ぎ、今こうして季節を生きているのかもしれません。