2025穀雨・牡丹華:座れば牡丹

日に日に夏の匂いが濃くなる横浜界隈です。

七十二候では「牡丹華(ぼたんはなさく)。その名の通り、牡丹の花が咲く頃となりました。

 

牡丹といえば、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という台詞が真っ先に浮かんでしまいます。講釈師や噺家さんがよく用いる言葉ですね。

美人を表すとして知られるこの言葉ですが、実は別の意味合いがあるといいます。

 

芍薬、牡丹、百合は、いずれも漢方の生薬になります。

その用い方を表現している、というのです。

「立てば芍薬」は、気の立っている女性には強張りを和らげる芍薬がよいの意。

「座れば牡丹」は、座ってばかりいる女性には瘀血(血の滞り)を改善する牡丹。

「歩く姿は百合の花」は、百合のようになよなよと歩くような心身症の女性には百合がよい。

このような意味合いがあるとか。

 

ただし、間違っても芍薬、牡丹、百合をそのままかじらないようにお願いいたします。

というのも……。

子どもの頃、年長の従兄弟と祖父母の家の庭で遊んでいた時のことでした。

濃厚な花の香りが漂ってきたのは、沈丁花。

今より少し早い、春の頃のことでしょう。

沈丁花が好きだった私は、その従兄弟に「いい匂いがするから、嗅いでみて」と言ったものです。

と、その従兄弟が沈丁花の枝に鼻を近づけ、おもむろにその花をぱくり!と口にしたのです。

驚いた私に従兄弟は言いました。

「あ、噛むんじゃなくて、嗅ぐのか……」

今も沈丁花の咲く頃になると、思い出します。

 

さて、牡丹から話は逸れてしまいました。

江戸時代に流行したとあって、掛け言葉のような遊びごころも感じられます。

遡って、平安時代には詠まれることの多くなかった牡丹。そのなかでも一首。

咲きしより散りはつるまで見しほどに 花のもとにて二十日へにけり
(藤原忠通『詞花集』)

 

ちなみに、アイキャッチの画像は、牡丹のようなチューリップです笑

横浜公園で撮影したものですが、今頃はすっかり散ったことでしょう。

季節は足早に過ぎていきますが、今しかないこの時。大切に過ごしたいですね。