日に日に夏の匂いが濃くなる横浜界隈です。
七十二候では「牡丹華(ぼたんはなさく)。その名の通り、牡丹の花が咲く頃となりました。
牡丹といえば、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という台詞が真っ先に浮かんでしまいます。講釈師や噺家さんがよく用いる言葉ですね。
美人を表すとして知られるこの言葉ですが、実は別の意味合いがあるといいます。
芍薬、牡丹、百合は、いずれも漢方の生薬になります。
その用い方を表現している、というのです。
「立てば芍薬」は、気の立っている女性には強張りを和らげる芍薬がよいの意。
「座れば牡丹」は、座ってばかりいる女性には瘀血(血の滞り)を改善する牡丹。
「歩く姿は百合の花」は、百合のようになよなよと歩くような心身症の女性には百合がよい。
このような意味合いがあるとか。
ただし、間違っても芍薬、牡丹、百合をそのままかじらないようにお願いいたします。
というのも……。
子どもの頃、年長の従兄弟と祖父母の家の庭で遊んでいた時のことでした。
濃厚な花の香りが漂ってきたのは、沈丁花。
今より少し早い、春の頃のことでしょう。
沈丁花が好きだった私は、その従兄弟に「いい匂いがするから、嗅いでみて」と言ったものです。
と、その従兄弟が沈丁花の枝に鼻を近づけ、おもむろにその花をぱくり!と口にしたのです。
驚いた私に従兄弟は言いました。
「あ、噛むんじゃなくて、嗅ぐのか……」
今も沈丁花の咲く頃になると、思い出します。
さて、牡丹から話は逸れてしまいました。
江戸時代に流行したとあって、掛け言葉のような遊びごころも感じられます。
遡って、平安時代には詠まれることの多くなかった牡丹。そのなかでも一首。
咲きしより散りはつるまで見しほどに 花のもとにて二十日へにけり
(藤原忠通『詞花集』)
ちなみに、アイキャッチの画像は、牡丹のようなチューリップです笑
横浜公園で撮影したものですが、今頃はすっかり散ったことでしょう。
季節は足早に過ぎていきますが、今しかないこの時。大切に過ごしたいですね。