2025年穀雨・霜止出苗:柚子の苗

横浜界隈では、いつのまにか緑萌え、すっかり初夏の風情です。

そして、七十二候は、霜止出苗(しもやみてなえいずる)となりました。

霜が終わり、苗が生長しはじめる頃ということですね。

 

SNSではご報告していましたが、柚子の種子から芽が出ました。

実家からもらった実から採った種子。数ヶ月前、それを植木鉢に植えました。

ところが、うんともすんとも言わず。

時々、掘り返してみたりして……もう芽は出ないかと思った頃合いでの、嬉しい出来事でした。

 

実生から実がなるまでには10年かかるとも。

この小さな苗が木となって、いつか実がなる。

緑豊かな葉のあいだに、鮮やかな黄色い実がころんと浮かぶ。

その風景を眺める自分。10年後の自分はどんなだろう?どうしていたいだろう?

10年後の「ありたい姿」に想いは広がります。

 

10年後というと、「自分はこの世にはいないかも?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

私もそう思います。

「いやいや、あなたはまだ若いから大丈夫よ」

そんな声が聞こえてきそうですが、10年後のことなど誰しもわからないもの。

なのに、なぜ10年後のことなど考えるのでしょう?

10年後のことなどわからないし、自分は存在しないかもしれないのに。

 

でも、だからこそ考えたいのです。

この柚子の木に実がなる頃、自分はこの世にいないかもしれない。

それでも、それを眺める自分の姿を想ってもいい。

そう想うからこそ、今の時間が連綿と続く時の流れとなって未来へとつながっていく。

 

先日、このサイトで公開した短編小説『ちいさなボウ』にも、そんな想いがあったような気がします。

ちいさなボウ〈上〉

この日、ちいさな蝉が土の中から出てきました。 ツクツクボウシの子どもです。 名前は〈ボウ〉。 ボウの頭の上には、柔らかい ...

ちいさなボウ〈下〉

  → ちいさなボウ〈上〉から続く    翌日。 立派な蝉の姿になったボウが、公園の木立の中にいました。  じー  つく ...