二十四節季は「清明」となり、明るく清らかで、活気に満ちた季節。その中でも4月5日からは、七十二候で「玄鳥至」。玄鳥すなわち、つばめが渡ってくる頃となりました。
「玄」という字には、奥深くて明かりの及ばない所の色の意があって、黒ないしは赤黒い色のこと。
まさに、つばめの羽の色。
穀物を食べず、害虫を食べてくれることから、古来より益鳥とされてきました。つばめが巣を作った家は繁盛するとの言い伝えもあるようです。
人の暮らしの近くにいる鳥。そのせいか、つばめにまつわる言葉は多く、「燕返し」「燕尾服」や「燕が低く飛んだら雨が降る」などとも。
ちなみに、私にとってのつばめの言葉とは……
幼い頃、好きな絵本に『こうしとむくどり』がありました。
子牛のまるちゃんと、仲良しのむくどり・りーやの物語。
夜、寝る前に、母が読んでくれたものです。
その物語のなかに、りーやが電線にとまったつばめたちに声をかけるシーンがあります。
「宣伝のつばめ……」
何回かに1回は、そう読む母でした。
子育て真っ只中の1日を終えたところで、眠かったのでしょう。
おかげさまでどうにか無事に成長し、すっかりいい年になりました。
ありがとう。
そして、今も電線に止まるつばめを目にするたびに、「宣伝のつばめ」という言葉が浮かびます。
そういえば……
「浅間山ろく玄鳥記」シリーズの、主人公・玄兵衛の異名は〈燕(つばくろ)の玄兵衛〉。
盗人集団の一角を担い、目指す屋敷に忍び込むとなれば、先陣を切って躍動する。抗争ともなれば、入り乱れる敵味方の間隙を鋭く縫い、短刀一本を片手に狙う相手を見紛うことなく仕留める。
その姿はつばめのようだというわけです。
浅間山ろくに飛び交うつばめの姿が、懐かしく思い出されます。